薬剤部
薬剤部は薬剤師が21名在籍しており、患者さんに安全に安心して薬による治療を受けていただくため、薬に関するいろいろな情報を提供しています。 薬による副作用や医療過誤の防止を重点課題として業務を行っています。
お薬の飲み方や使い方などで不明なことがございましたら、いつでも気軽にお声をかけてください!
また、当院では基本的に外来患者さんのお薬は院外処方となっています。お近くの薬局にてお薬を受け取ってください。かかりつけ薬局をもつことで、薬の飲み合わせによる副作用を防ぐことができます。
2017年4月にがん薬物療法認定薬剤師研修事業(日本病院薬剤師会)の研修施設として認定を受けました。胆振では初、道内6施設目の認定です。
これにより、大学病院やがんセンター等で3ヶ月間研修を行っていたことが当院で研修が可能となりました。 これを機会に院内外からがん薬物療法認定薬剤師を目指す薬剤師の方々が当院へ研修に来ていただければと思います。
◆後発医薬品およびバイオ後続品の使用と医薬品の供給状況について
国の政策によって医療費を抑える目的で先発品より価格が低い後発医薬品(ジェネリック医薬品)やバイオ後続品の使用が推進され、現在、後発薬の占める割合は数量ベースで約8割に達していると言われています。
しかし、近年、製薬会社の営業停止や欧州などでの争乱、新型コロナウイルス感染症の影響などによって次々と医薬品の製造や流通に影響が及び製造・輸入の一時停止や遅延が長引き、供給が追いつかない事態となっています。
このため、医薬品の入荷状況によっては、いつもお使いのお薬が入手できず変更となる可能性があります。このような場合、あらかじめ十分にご説明させていただきますのでご承知おきの程よろしくお願いします。
業務紹介
より安全な服薬を目指して
当院の薬剤部では各病棟に専任薬剤師を配置しており、投薬されている患者さんへの服薬指導を中心として、病棟における医師や看護師の業務負担を軽くし、薬物療法の質の向上に資する薬剤関連業務をすべての入院中の患者さんを対象として実施しています。
①薬剤管理指導業務
ベッドサイドでは服薬指導を行いながら、投薬時の薬剤の剤形は適正であるか、副作用が出現していないかを確認することだけではなく、バイタルチェックを行うことで副作用を確認することもあります。退院時処方の指導では退院後の服薬についての指導や、本人だけでなく家族などへ指導することもあります。
②病棟薬剤業務
病棟担当薬剤師は電子カルテやシステムを利用し、投薬・注射状況の把握、患者さんのバイタルチェックや血液データから積極的に処方提案を行っています。また、医師からはバンコマイシンやアルベカシン抗生物質などの投与量設計TDMを必要とする薬剤のコンピュータによる解析投与設計の依頼をはじめ、それぞれの患者さんにあった治療薬について薬剤選択・投与量・投与方法などを相談したうえで薬物療法を提供することもあります。看護師からは配合変化や点滴薬剤の調製方法や投与方法、化学療法の投与時間や副作用のケアなどについての相談を受けて回答しています。これまで医師や看護師がおこなってきた副作用の確認などの薬剤管理業務の負担を軽減し、するだけでなく、薬剤師の活躍により服薬指導業務だけではなく、医療スタッフの欠かせない存在として、薬剤師がより質の高いチーム医療を提供することを目指しています。
③補給室管理業務
院内で使用される医薬品の購入・供給を行っている部署です。2000品目を超える製品を取り扱っております。
病院内には各部署に医薬品が配置されておりますが、各部署の在庫・品質管理も行っています。
薬剤の中には人の血液から成分を抽出した特定生物由来製剤というものがあり、患者さんに使用した際には、その製造番号などを20年間管理しております。
入院・外来患者さんの注射調剤を始め、医療スタッフへの薬剤情報の提供などの業務も行っております。
注射薬のセット方法 1.注射箋鑑査 相互作用等のチェックは内服も合わせてシステムにて行います。投与量、手技、配合変化、投与速度、投与回数、投与間隔、投与期間、薬剤規格の組み合わせ等のチェックを隈なく行い、調剤を開始します。 2.セット 基本的には、個人ごと専用のカゴにセットして1日分ごと払い出します。修正、追加等は都度対応しています。 3.鑑査 調剤する時と同様、隈なくチェックを行います。ここが最後の砦であるという信念をもって業務にあたります。使用期限等にも気を配ります。 最後に、ラベルシールを添付します。 (処方ごとにバーコードが印字されます。実施時にバーコードリーダで照合し誤薬を防止しています。) |
④DI業務
薬品情報の発信基地です。毎月、DIニュースを発行しています。 また、日々の情報は院内LANなどを利用して必要とするところへ発信しています。
⑤治験業務(治験管理室)
今よりも安全で有効性の高い薬が誕生することで、未来の患者が恩恵を受けられるようになります。現在使われているすべての薬は、過去に多くの被験者の協力があってこそ薬として使われています。もちろん、当院では、GCP等法令を遵守し治験を実施しています。また、他の施設と同様にSMO;Site Management Organization(治験施設支援機関)と共同で業務を実施しています。
お問い合せ先 TEL.0143-44-4650(代表)
⑥製剤業務
製品化されていない治療薬や検査薬等を薬剤師が調製する業務です。日本病院薬剤師会の指針に基づき、製剤プロセスや使用目的によってクラス分類を行い、適正な院内製剤の運用を行っています。
与薬システムによる新しい薬歴管理
当院では、全国に先駆けて、入院患者さんにお薬を安心して飲んでいただける「与薬システム」を開発し、運用しています。
① 持参薬調査・識別業務
『持参薬を確認する目的』
1. 重複投与を避けることができます。
2. 同時に服用してはいけない薬(併用禁忌)や相性が悪い飲み合わせを避けることが
できます。
3. 手術や検査前に服用中止指示のある薬をチェックすることができます。
4. 医療資源であるお薬を無駄なく使用できます。
持参薬と識別依頼書および識別作業
薬剤師3名、事務スタッフ1名で持参薬識別を行っています。混雑時には全薬剤スタッフの応援がはいります!
② 調剤業務
入院処方薬と持参薬を合わせて、服用時間ごとに個人専用カセットにセットします。
『与薬システムのメリット』
1.医師、看護師との連携により正確な薬歴管理ができます。
2.持参薬と入院処方薬を合わせて1包化しているため患者さんも安心です。
3.1日分ごと1包化調剤しているため処方変更にも即対応できます。
4.配薬に費やす時間を服薬指導に振り分けられます。
<<与薬調剤のカセットと散薬鑑査システムおよび水薬鑑査システム>>
与薬システムとは? 国内で唯一、入院処方のためのオリジナルシステム「与薬システム」を使用して服用する薬を管理しています。このシステムは、当院が先駆けて開発したものです。 一般的に薬の管理方法は、大きく分けて「自己管理」と「病棟管理」に分けられます。このシステムでは、1日分ごと1包化して個人専用のカセットにセットしています。例えば、朝昼夕食後に薬を飲んでいる方であれば、3つの専用カセットを使用して、それぞれ朝の分、昼の分、夕の分に分けてセットしています。 また、電子カルテが導入されているので、薬歴の確認や医師の指示も随時確認しながら投与直前まで処方変更や増量・減量、再開、中止等にも対応しています。 このシステムを利用しているため、薬剤師は配薬を行っていませんが、看護師を対象としたアンケートでは看護業務の負担軽減に与薬システムが寄与しているという結果が得られました。与薬システムは、 ①個人ごと、かつ、服用区分ごとにセット準備している ②全患者の1回服用分ごと正確に薬剤部が把握している ③配薬に費やす時間を服薬指導に十分振り分けられる これらのことから、配薬と同等の安全性を有していると考えています。 与薬システムの手順 |
③IVH混注業務
薬剤部では、IVHの輸液を組成や配合変化等のチェックを行い混注し、無菌的な製剤として提供しています。このことにより、安全かつ有効な栄養療法に貢献しています。
④TDM解析業務
対象薬剤が有効かつ安全に投与できるよう、血中濃度シミュレーション及び解析を行い、個々の患者様に適した投与計画を提案する業務です。血中濃度の解析は、有効治療域と副作用発現域、患者様の状態を考慮して行い、投与量や投与間隔、採血ポイント等を医師へ提案しています。
※単位は件
がん治療への参画
Ⅰ.化学療法関連業務
① 抗がん剤混合調製業務
休日を含め入院、外来すべての抗がん剤を薬剤部にて調製しています。調製室は外来化学療法センターに隣接しておりした調製室に安全キャビネットを3台設置しています。安全キャビネット内で無菌的に調製することで、抗がん剤の被爆や汚染防止に努めながら、患者さんへ投与されるまでに何重ものチェックを行い、抗がん剤治療の安全確保と円滑な業務体制をとっています。
② 外来服薬指導業務
薬剤部では初めて外来で治療を受けられる患者さんへレジメン毎に作成したパンフレットを用いて、治療スケジュールと予測される有害事象とその対策方法などに関して指導を行います。その後も患者さんに現れた副作用を評価して、症状を和らげるお薬や予防するお薬(吐き気止め、口内炎の予防と治療等)の提案を医師へ行い、処方されたお薬の説明を行っています。患者さんが安心して薬物治療を受けていただけるように、患者さんの理解度に合わせて出来るだけ分かりやすい指導を心掛けています。医師・看護師とは定期的なカンファレンス等を通じて、薬学的知識を提供し、安全で質の高い治療が遂行できるよう努めています。
内服薬のみで抗がん剤治療を行っている患者さんに対しても同様に対応をしています。些細なことでもお薬のことで気になることがあれば、声をおかけ下さい。
③薬薬連携
薬薬連携とは、病院・診療所と保険薬局薬剤師(かかりつけ薬局)が患者さんの薬物療法に関わる患者背景、有害反応や服薬状況などについて相互に連絡を取り合い、患者さんの薬物治療が安全に行われ有効性が担保できるようにサポートする体制のことです。薬剤部では薬剤情報連絡書を用いて保険薬局と密に連携を取り、患者さんががん薬物治療を安心して受けられる体制をとっています。また、製鉄記念室蘭病院がん薬薬連携セミナーを定期的に開催し、近隣の保険薬局との勉強会を行って情報共有を図っています。
④レジメン管理
レジメンとは、がん薬物療法における抗がん剤、輸液、支持療法薬をどのように投与するかを定めた時系列的な治療計画です。レジメンは院内の化学療法委員会で妥当性を評価し、承認され使用可能となります。薬剤部は委員会の事務局を兼ねており、2名の薬剤師が委員として薬学的立場からレジメンの設計、登録、管理を行っています。また、当院では、地域の医療機関や保険薬局からのレジメン(治療内容)や状況に関する相談及び情報提供等に応じる体制を取っていますので、必要に応じてお問い合わせください。
Ⅱ.緩和ケアチーム
緩和医療認定看護師を中心とし、癌性疼痛コントロールが不良である患者や在宅医療へ向けての薬剤調整等を行っています。
緩和医療における薬剤投与設計はエビデンスに沿ったもののほか、経験が重要視される面も多いため、日頃から医師や看護師と相談しながら活動することを心がけています。
緩和ケアチームの薬剤師は薬剤全般的な知識が必要であり、疼痛コントロールを始め、輸液量や剤形調整などの具体的なアドバイスなどを行っています。また、医師と共に回診を行う時には、医師の前で疼痛状況の確認を行い、その場で薬剤の処方提案を行うこともあります。そのため医師からカンファレンス以外でも、直接相談されることもあります。
<チームメンバー>
医師 2名
緩和薬物療法認定薬剤師 1名
緩和医療認定看護師 1名
ソーシャルワーカー 1名
抗菌薬適正使用の支援
①抗菌薬適正使用支援業務
抗菌薬の不適切な使用により薬剤耐性が助長されるため、抗菌薬適正使用支援チームとして活動しております。特定抗菌薬の使用を把握し併用薬剤や投与方法について確認や処方提案を行っています。また、長期使用となった場合は使用理由や抗菌薬の使用期間について確認します。
②抗菌薬適正使用支援チーム(AST:Antimicrobial Stewardship Team)の活動
微生物に対して抗菌薬が効かなくなることを薬剤耐性と呼びます。抗菌薬の不適切な使用により薬剤耐性が助長されるため、多職種間で連携をとりながら抗菌薬の適正使用を推進する活動を行っています。
~主な活動内容~
1)感染症治療の早期モニタリング
特定の抗菌薬使用者や血液培養陽性者のモニタリングと多職種によるラウンドを行っています。使用理由が不明な場合は症状詳記を担当医師へ確認し、不適切と判断した場合は情報提供や処方提案を行っています。
2)採用薬・マニュアルの見直し
抗菌薬使用統計や最新の治療ガイドライン等を確認し、抗菌薬の採用品について適時提案するよう努めています。院内の抗菌薬適正使用マニュアルを定期的に見直しています。
3)職員研修
年に2回開催し、AST活動の紹介や抗菌薬の適正使用についての情報共有を図っています。