過去の連携ニュース

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・2023年2月   ・2023年1月

【2023年2月】連携ニュース

胆膵内科
ドクターメッセージ
高難易度のEUS-GBDは全国有数の症例数
当科では各種胆嚢ドレナージが可能です
胆膵内科 科長
おの みちひろ
小野 道洋

札幌医科大学 2003年卒 
【認定医など】
日本内科学会認定内科医
日本内科学会総合内科専門医
日本消化器病学会専門医
日本消化器内視鏡学会専門医・指導医
日本胆道学会認定指導医

胆膵内科では、胆道(胆のうと胆管)・膵臓の疾患を専門に診療にあたっています。頻度が高い疾患は胆石・胆のう炎、胆管炎、黄疸などの良性疾患ですが、胆膵領域のがんも高齢化に伴い増加傾向にあり、常に外科と連携しながら、最適な治療を行うようにしています。検査は超音波検査、C T 、M R I が中心となりますが、超音波内視鏡(EUS)を用いた検査や治療、後方斜視鏡を用いた膵胆管造影検査(ERCP)などの特殊な手技も多く行っています。

胆石の治療選択肢が増えています

日本人の胆石保有率は約5%とされています。若年女性に多いことが有名ですが、1年で2~4%で症状がでるともされており、高齢化社会が進んでいる昨今では、高齢者の胆嚢炎をよく経験します。胆嚢炎の治療は今も昔も手術が第一選択となりますが、高齢者の中には手術リスクが高い患者さんも多いため、内科的な治療法が選択されます。
当院では一般的な治療法である経皮的胆嚢ドレナージ(PTGBD)の他に、内視鏡的逆行性膵胆管造影検査(ERCP)による経乳頭的胆嚢ドレナージ(ETGBD)、超音波内視鏡ガイド下胆嚢ドレナージ(EUS-GBD)が施行可能です

経皮的胆嚢ドレナージ(PTGBD)と経乳頭的胆嚢ドレナージ(ETGBD)

PTGBDは右肋間から肝臓を貫いて胆嚢にドレナージチューブを留置する手技で、広く普及している手技です(Fig.1 A)が、 抗血栓剤を内服している場合は、出血リスクが高く、推奨できません。また長期間留置することで、チューブトラブル(閉塞や逸脱)がおこる確率が高くなりますし、皮膚のトラブル(テープまけ、胆汁漏れ、皮膚の痛み)や運動制限(深呼吸でチューブが逸脱)、入浴制限などによるQOL低下が問題になります。認知機能が低下していると、自己/事故抜去にも注意が必要となります。

 

ETGBDはERCPから派生する処置で、乳頭から胆嚢管を経て胆嚢にステントを留置する手技です(Fig.1 B)。穿刺や切開を必要としない手技ですので、抗血栓剤を内服している症例に行うことができますが、ERCPの合併症である膵炎、消化管穿孔がおこりえます。胆嚢管の走行によっては、胆嚢にステントを誘導することが非常に困難なことがあり、他の治療法よりも手技成功率が低いです。

 

 

超音波内視鏡ガイド下胆嚢ドレナージ(EUS-GBD)

EUS-GBDは超音波内視鏡を用いて、胃/十二指腸から胆嚢を穿刺し、胆嚢と胃/十二指腸を橋渡しするようにステントを留置する治療法です(Fig. 2)。Meta-analysisによると手技成功率は94-97%、臨床的成功率は92-100%と非常に良好で、PTGBDと比較したRCTでは、1年後の偶発症率はEUS-GBD 25.6%、PTGBD 77.5%(P<0.001)と有意に低いと報告されています。2022年に発刊されたESGE(European Society of Gastrointestinal Endoscopy)Guidelinesでは、手術高リスクの胆嚢炎に対し、「ETGBDよりもEUS-GBDを推奨(強い推奨)」、「PTGBDよりもEUS-GBDが望ましい(強い推奨)」と記載されました。

 

メリット:手技成功率が高く、偶発症率が低いうえに、体外にチューブがでないので、チューブ管理が不要となります。自己抜去のリスクもありません。直径6mmの金属ステント(Fig. 3)を留置するためドレナージ効率が良好で、治癒が早いため、退院期間の短縮につながります。抗血栓剤を内服していても出血リスクが低いと報告されており、当院では抗血栓剤を内服している症例にも施行しています。

デメリット:手技の難易度が高く、専門的な知識・技術が必要なため、普及していません。合併症としてステントの迷入・逸脱がおこりえます。

2020年11月~2022年10月に当院で施行したEUS-GBDは71症例で、全国有数の症例数です。手技成功率/臨床的成功率は共に98.6%、早期偶発症率4.2%、後期偶発症率12.7%と非常に良好な成績が得られています。2022年6月には、道内3施設目となる処置専用の超音波内視鏡である「直視コンベックス型超音波内視鏡:TGF-UC260J」を導入しました(Fig. 4)。これにより、更に安全にEUS-GBDを行うことが可能となりました。

当院にはこの他にもディスポーザブル胆道鏡、砕石用レーザー、処置用ダブルバルーン内視鏡といった装置を常備しております。あらゆる胆膵疾患に対応可能ですので、是非ご紹介ください。高度な医療を安全に提供させていただきます。

N E W S 1 循環器内科医師 直通ホットライン
「ハートコール」で気兼ねなくご相談を!

循環器内科医師に直接繋がるホットライン「ハートコール」は、昨年末の開設から約1か月で3件のご利用がありました。いずれも入院治療を必要とし、救急搬送を要する症例もありました。
急性心筋梗塞や狭心症、急性心不全等、循環器救急を疑う場合はいち早い判断が重要です。これまでは代表電話や地域医療連携室を介しての相談・受診調整が必要でしたが、ハートコールではダイレクトに循環器の専門医に繋がるため、より迅速な患者対応が可能となりました
ハートコール開設のねらいは、循環器を専門としていないクリニックからも、身構えず気軽にご相談いただけるところにあります。受診のご依頼はもちろん、どんな些細なご相談でも構いませんので、ぜひハートコールをご利用ください。

 

 

 

【2023年1月】連携ニュース

新年明けましておめでとうございます

2023年の年頭に当たり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
地域の連携機関の皆様におかれましては、平素より当院地域医療連携室をご利用いただきありがとうございます。
私たち職員一同、「思いやりの心を大切にし、安全で信頼される医療の提供を目指す」という法人理念のもと、より一層良質なサービスの提供に努めて参ります。
より円滑な地域連携に取り組んでいきますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。

呼吸器内科
ドクターメッセージ
肺がんの早期診断・個別化治療に向け
 最新の検査機器を続々導入
呼吸器内科部長
たなか やすまさ
田中 康正

札幌医科大学 1998年卒 
【認定医など】
日本内科学会認定内科医
日本内科学会総合内科専門医
日本呼吸器学会専門医
インフェクションコントロールドクター(ICD)
当科の現況

当科は地域最大の 医師5名体制で診療を行っております。当科が中心となってCOVID-19に対応するようになって既に3年になろうとしています。当初は肺炎と呼吸不全を呈し人工呼吸管理を要する症例も少なくありませんでしたが、その後ワクチン接種の普及や変異株の弱毒化もあり、当地域でも全国的な傾向と同様にCOVID-19そのものによる重症症例は減少しています。現在の入院症例は基礎疾患や合併症による事が多く、全科で協力して対応しております。しかし、感染力が強いため入院症例が多く、まだ先が見えない状況です。
COVID-19以外にも当科では幅広い疾患に対応しておりますが、特に 肺がん診療には力を入れており、呼吸器外科と連携して、診断や標準治療を地域内で完結することが可能です。COVID-19によるパンデミック後も肺がんの症例数は大きくは減少していません。肺がんの治療法の発展には目覚ましいものがあり、最低でも標準治療を意識して日々努力しております。

最新の検査機器

本年度より細径胸腔ビデオスコープと極細径気管支ビデオスコープを導入しました。

→LTF-H290

細径胸腔ビデオスコープは、いわゆる内科的胸
腔鏡検査に用います。局所麻酔下で 胸膜病変を直
視下に観察、生検することが可能
です。大きな処
置は不能ですが処置時間も短く合併症がある患者
さんにも比較的安全に行う事ができます。

→BF-XP290

近年、CTの性能向上および検査数の増加に
よって末梢肺に小型病変が見つかる機会が増加
してます。悪性が疑われる場合、主に気管支鏡
検による組織生検が実施されます。極細径気管
支ビデオスコープは先端の直径が僅か3.1mmと
細く、 より末梢病変へのアプローチが可能とな
りました。また、近年は画質も飛躍的に向上し
ています。これまでは透視やプローブ型エコーで病変を確認した後に組織の生検を行っていたような症例でも、直視する事が可能な場合もあり正診率の上昇が期待できます。

クライオ生検(Cryobiopsy)とは

当院では今後Cryobiopsyを可能とするク
ライオプローブの導入について考慮中です。
クライオ生検とは、クライオプローブの先
端を冷却し、その先端部が病変に接触する
ことにより周囲の組織が凍結され、凍結さ
れた組織はプローブの先端部と接着してい
るため、そのまま引きちぎることで 挫滅が
少なく、大きな検体を採取することが可能
な方法です。通常は、生検鉗子という小さ
な道具を用いて肺の組織をつまみ取ります
が、間質性肺炎の病型を診断するためには、
通常サイズの鉗子では採取できる組織の大
きさが限られており、有用性に限界があり
ます。また、原発性肺癌の診断においては、個別化医療の時代となり、精密な遺伝子変異の検査などに大量の組織を必要とする機会が増えています。

肺がんの早期診断・個別化治療に向けて

新規の機器導入により末梢陰影の診断率が日々進歩しています。肺がんの死亡率は多臓器と比較すると、まだまだ高いままですが、早期の診断と手術により根治できることも多く、また進行がんでも十分な検体量を採取することにより適切な個別化治療が行われれば長期生存も可能な時代となっています。当科もデバイスや新薬の登場に常に追随していきます。

 

N E W S 1 齋藤医師がヘルニア技術認定医取得(道内9人目)
月・木曜日 午前 鼠径ヘルニア外来を再開

当院外科・消化器外科の齋藤 崇宏医師が道内9人目と
なる日本内視鏡外科学会 消化器・一般外科領域のヘルニ
ア技術認定医を取得し、2022年12月より 毎週月・木曜
日の午前に外科・消化器外科にて鼠径ヘルニア外来を再
しました。
鼠径ヘルニアは高齢男性に多く、筋肉の裂け目から腸
が脱出し鼠径部が膨らみます。放置すると痛みが出たり、
重篤なケースでは腸が筋肉の壁に締め付けられて虚血状
態となり、腸壊死に至る場合もあります。
治療は主に腹腔鏡手術で、手術時間は1時間から1時間
半、入院期間は平均4日です。
当科では、 鼠径ヘルニアの診断から手術、術後管理ま
での診療体制が整っています
ので、鼠径部に違和感や不
快感のある患者さんがいらっしゃいましたら、鼠径ヘル
ニア外来にご紹介下さい。

N E W S 2 赤谷放射線技師が当院2人目の
放射線治療専門放射線技師に認定

赤谷 伸也放射線技師が2022年10月1日付けで放射線治療専門放
射線技師の認定を受けました
。当資格は、日本放射線治療専門放
射線技師認定機構が放射線治療に対する専門性を統一的に評価す
るものであり、専門領域における十分な 知識・経験を持ち、患者
さんから信頼される標準的な放射線治療技術を提供できる診療放
射線技師であることを示すものです。
当院では清水 正洋放射線技師につづき2人目の認定となりまし
た。引き続き、患者さんが安心して良質な医療を受けられるよう
努めて参ります。