臨床工学科
当科は2024.5月現在18名の臨床工学技士が在籍し、ローテーション勤務体制を軸にオンコール体制と宿直日直体制にて24時間365日緊急手術・治療に対応しています。
1987年に国家資格として制定されてから2024年で37年と多職種と比べて比較的新しい資格です。しかし多種多様な医療機器が増える中で、医療機器のスペシャリストとしては必要不可欠な時代となり、当院でも手術ロボットdaVinciや新型ウィルスで注目を浴びたECMOの操作・管理の他にも代表的な業務として手術室業務・心臓カテーテル検査治療、透析・救急医療と院内でも欠かせない存在となってきております。
2023年度時間外呼び出しが166件、宿日直204件(平日87件・休日117件)でした。
新人の育成・バックアップ体制はもちろんのこと、日本臨床工学技士会認定臨床実習指導者 1名在籍しており、道内・外の養成校からの臨床実習や見学も受け入れ対応していますのでお気軽にご相談ください。
業務はICU・手術室・人工心肺・心カテ室・本院透析室・関連施設である透析クリニック・高気圧酸素治療・アフェレィシス・ペースメーカー外来・器材業務と多岐にわたり、活動フィールドが広く知識と技術の習得が大変ですが、各部署との連携を図りながらチーム医療の一員として高度で専門性の高い業務を良い医療サービスの提供を目指しています。
メーカー主催の勉強会・学会参加での知識・情報収集・技術習得はもとより、関連学会が独自に行っている学会認定資格取得を目指しています。また後輩育成にも役立てたいと考えています。
2024.5月現在以下の資格取得者が在籍しています。
資格名 | 人数 |
透析技術認定士 | 9 |
体外循環技術認定士 | 4 |
3学会合同呼吸療法認定士 | 4 |
心血管インターベンション技師 | 2 |
アフェレシス技術認定士 | 1 |
臨床高気圧酸素治療専門技師 | 1 |
医療機器情報コミュニケーター(MDIC) | 1 |
認定血液浄化関連臨床工学技士 | 1 |
日本臨床工学技士会認定臨床実習指導者 | 1 |
AHA BLS instructor AHA ACLS provider | 1 |
ICU業務
当院のICUは循環器内科の心臓カテーテル治療後や心疾患治療目的に、呼吸器・消化器外科は手術後に必要に応じて入室があります。また他科では術後・急変時の入室があります。
心臓血管外科に関しては西胆振地区で唯一緊急手術対応可能施設ですので、緊急入室からの臨時手術に移行する症例も少なくありません。
業務内容としては、年間2000例を超える当院の手術件数の中で、術後の集中治療管理が必要な患者さんへの、人工呼吸器(3学会合同呼吸療法認定士4名在籍)、緊急透析、アフェレシス、ECMO・低体温療法の準備・管理に対応し、常時1名で業務にあたり24時間on call又は宿直にて対応しています。
ECMO装置3台 Impella2台 IABP2台 急性血液浄化装置3台 個人用透析機器2台 人工呼吸器11台 ネーザルハイフロー3台など保有。
また関連大学病院への緊急搬送の際は工学技士も救急車に乗車することもあります。
機器管理業務
院内貸し出し機器は全て医療機器管理ソフト「MARIS」を用いて貸し出し・点検・修繕管理を行い稼働率などから次回の機器更新に役立てています。院内で点検・修理(人工呼吸器・除細動器・シリンジ/輸液ポンプ・保育器・生体情報モニター)するにあたり、メーカー研修を受けているので院内で自主完結することができ、コスト削減にも一役を担っています。
そのためメーカーとの情報交換・勉強会・研修会も行っています。
対応できない物は、メーカーへ修理依頼します。
また各院内委員会のメンバーに所属し、医療機器のスペシャリストの視点での医療安全の啓蒙活動にも協力しています。
<代表的な貸出機器保有数>
シリンジポンプ 195台、輸液ポンプ 364台、経腸栄養ポンプ 15台、PCAポンプ 3台、持続吸引機 31台、離床センサー 139台
心臓カテーテル室業務
当科では主に内科循環器の心臓カテーテル検査・治療に携わっており、各種デバイスの管理・ペースメーカー植込み立会い、アブレーション(経皮的心筋焼灼術)補助、補助循環装置の管理操作も行っております。検査室は2部屋あり、定期症例では常時2名で業務に当たっており、検査・治療中の不測の事態が起こっても対応できるように事前の準備を行い、緊急事態にも即座に対応できるよう日頃からメンテナンスや物品の管理をしております。
心血管インターベンション技士2名在籍し、より安全な治療・情報提供を行っています。
治療件数の半数は緊急症例であり、勤務体制も24時間365日即時対応できるよう呼出待機当番制としています。
2022/11からImpellaが2台臨床使用可能となり北海道内で7番目、札幌以南の地域では初の稼働認定施設です。
昨今の新型コロナウィルスに対応して当科保有のECMOを3台に拡充し2020/9より心臓血管外科医、呼吸器内科医、循環器内科医、ICU看護部との「ECMOチーム」の一員として日々科内でのトレーニングや情報収集・共有に努めています。
ペースメーカー業務
当院の外来患者さんは毎週木曜・金曜日に循環器医師と共にペースメーカー専門外来にてペースメーカーチェック(3か月・6か月毎)を行っております。
条件付きにて遠隔モニタリングのチェックも行っています。
2022年度は1126件でした。
救急外来や入院中も必要に応じて対応しています。
高気圧酸素治療業務
第1種SECHRIST Model2800 1台を保有し、2022年度は189件治療しました。
海が近いことから海難事故での潜水病など、緊急対応も行っています。
治療中はテレビを見ることが可能で、傍にて臨床工学技士が治療操作を行っています。
開始前のポスターでの安全確認や耳の遠い方へは、治療中に外よりプラカードを用い、ジェスチャーも交えて意思疎通を図るように心がけています。
臨床高気圧酸素治療専門技師が1名在籍しております。
透析室業務
当院の透析室は15床あり、コンソールは日機装を導入しています。
入院患者様を中心にHD、HDFを行っています。閉塞性動脈硬化症患者様への治療目的に2022年よりレオカーナを導入しました。業務内容は、透析装置の保守点検・機器の操作・穿刺業務・エコー下穿刺・患者観察・機器のトラブル対応・医療材料の管理を行っています。当院透析室、サテライトクリニック知利別(60床)の2施設に臨床工学技士を配置しています。
透析技術認定士9名と認定血液浄化関連臨床工学技士1名が在籍し安全・適切な治療を提供しております。
両施設、月1回の水質・生菌検査を行い、安全で清潔な透析液を提供できるよう努めています。
<本院透析室>
<サテライトクリニック知利別 透析室>
全台on-lineHDF/I-HDF対応 工学科技士によるエコー下穿刺・シャント血管の観察も実施しています。 |
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常時4~6人の臨床工学技士が業務にあたる。 メンテナンス計画に基づき、技士による修繕・管理しています。 |
手術室業務
手術室では大小多くの医療機器が使用されます。
6部屋ある手術室に臨床工学技士は3名配置され、主に麻酔器・生体情報モニター・電気メス・内視鏡装置・人工心肺装置・ナビゲーション装置・手術支援ロボットなどの点検運用管理、また臨床における準備や操作を行っています。
近年当院では全身麻酔管理の手術が年間約2000例あり、そのうち臨床工学技士が立ち会う手術は半数近くにのぼります。最新の機器を用いた低侵襲な手術は増加傾向であり、臨床工学技士に求められる業務は少なくありません。
他にも業務委託している中央材料室のマネジメントやデバイス勉強会の実施など、多くの場面で様々な役割を担っています。
また今後の展望としてハイブリット手術室の増設やタスクシフト/シェアの推進に伴う更なる業務範囲の拡大が想定されるため、より安心で安全な医療の提供ができるように努めていきます。
人工心肺業務
心臓・大血管手術をする際に使用する人工心肺装置や補助循環装置などの操作を行っています。大血管置換術をはじめ、大動脈弁置換術や僧帽弁形成術/置換術、冠動脈バイパス術などでは手術室勤務の技士とは別に体外循環チームとして技術認定士1名以上を含む3名の臨床工学技士が配置され、手術準備からICU入室まで対応します。
西胆振唯一、心臓血管病の緊急手術が可能な病院として24時間365日体制でサポートしています。
体外循環技術認定士4名在籍。
daVinci業務
2018年9月より胆振管内初導入となった手術支援ロボット「daVinci Xi」の準備、トラブル対応、運用管理業務などを行っています。
これまで約5年、ロボット支援下で胸腔鏡手術320例以上、前立腺全摘除術180例以上、直腸がん手術120例以上の立ち合いを経験しており、術前準備から撤収まで潤滑な運用ができるように工夫し取り組んでいます。