(最終更新日:2024/9/12)
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今月( 9 月)の連携ニュース
内科・循環器内科 ドクターメッセージ | 夏バテと熱中症 循環器疾患患者は要注意 |
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内科・循環器内科 主任科長
たかはし ひろし 高橋 弘 |
【認定医など】
医学博士 日本内科学会認定内科医 日本内科学会総合内科専門医 日本循環器学会専門医 他 |
近年、日本全体で気温の上昇傾向が顕著となり、冷涼な気候である西胆振地域も例外ではありません。室蘭の8月の気温をみると2022年まで平均最高気温は25度以下、平均最低気温は18度台でしたが、2023年以降は平均最高気温は26-27度、平均最低気温も21-22度と上昇傾向にあります1)。この気候変動は住民の生活様式ばかりではなく健康に直接的な影響を及ぼしつつあります。当地域でも夏バテや熱中症のリスクが高まってきており、特に循環器疾患患者さんは熱中症による死亡リスクを2.5倍に上昇させるとのメタ解析による報告2)もあり、より綿密な患者管理と指導を考えなければいけません。
▶夏バテと熱中症(表1)
「夏バテ」は、慢性的な体調不良の状態で、自律神経系の乱れや代謝機能の低下が主体です。原因は、長期の高温多湿環境、冷房による温度差や栄養バランスの乱れが原因となります。発症は緩徐で、ADL、QOLの低下に至ります。 「熱中症」は、急性の体温調節障害で、体内の熱産生と放熱のバランスが崩れによる体温の急激な体温上昇が主体です。原因は高温環境での長時間の暴露、体温調整機能不全、水分と塩分の不足が原因となります。
この二つの病態は異なりますが、「夏バテ」が続く事により「熱中症」のリスクが高くなる可能性があります。
▶熱中症の病態生理 3) 熱恒常性が維持されている場合、熱産生は代謝率に決定され、熱放散は①汗の蒸発②対流、③伝導、④放射の4つのメカニズムによっておこなわれます。後者3つのメカニズムは皮膚から環境への受動的な熱移動によっておこなわれ、心拍出量と皮膚血管緊張度により制御されます。深部体温が上昇すると発汗と心拍出量が増加し皮膚血管拡張と内臓血管拡張により血流が皮膚に多く配分されます。 高温多湿の環境では、代謝率増加により熱産生は増加し身体と環境の温度差が小さくなり熱放散能力は低下します。環境温度が深部体温を超えると、熱伝導、対流、放射のメカニズムが逆に働き、熱が環境から身体へ移動します。湿度が高い環境では熱の不均衡がさらに悪化し、汗の蒸発が減ります。熱産生が熱放射を上回ると深部体温は上昇し、皮膚血管は最大限に拡張します。頻呼吸、発汗と皮膚血流増加により循環血液量は減少するため、平均動脈圧を維持するために心拍数を上昇させ心拍出量を増やす必要があります。この代償機転が破綻すると循環虚脱がおこり、さらに深部体温が上昇します。
▶心血管系への影響(図1、表2) 心血管系に機能障害がある人、特に高齢者は心拍出量を増加させる能力が低下しており、主に心拍数の増加によって代償します。 アテローム性動脈硬化症や加齢による血管硬化により一酸化窒素への反応性が低下し、皮膚血管拡張機能も低下しています。心室機能障害や弁膜症の患者さんも心拍出量の増加をさせることができないためリスクが高まります。 (心筋虚血/損傷) 熱中症患者の50%程度にST異常がみられます。その半数は虚血性変化を示し、多くで心筋逸脱酵素の上昇や局所壁運動異常を伴います。また心筋トロポニン値が高度に上昇している患者は死亡率が著しく高くなります。 熱中症における虚血の病態生理は多因子性です。特に高齢者は心室肥大、弁膜性心疾患、冠動脈疾患などの心血管機能障害により需要と供給の不均衡による虚血に陥りやすくなります。また極度の高温によるサイトカインによる細胞毒性も一因となる可能性があります。 (心不全) 熱中症は心不全の原因となる可能性が高くなります。その原因は虚血と需要供給の不均衡および熱中症によるアドレナリン過剰分泌状態に起因するストレス誘発性心筋症が考えられます。循環虚脱患者の大半は、低全身血管抵抗と高拍出による分布/低循環ショックに関連していますが、心血管疾患患者で心拍出量の低下と全身血管抵抗の上昇を伴う低血圧状態となり死亡率が高くなります。 (突然死) 基礎疾患である心血管系の機能不全による突然死の発生率を高めます。
▶循環器疾患治療薬が熱中症に及ぼす影響 4) 循環器疾患の治療薬の多くは、熱中症のリスクを高めます。β遮断薬および非ジヒドロピリジン系カルシウムチャネル遮断薬は、熱ストレスに対する心拍出量の増加能力を低下させます。利尿薬は、熱中症による体液減少状態を悪化させ電解質異常のリスクを高めます。レニン・アンジオテンシン系阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬およびアンジオテンシン受容体拮抗薬)は、熱中症に伴う急性腎障害のリスクを高めます。経口血糖降下薬(メトホルミン、スルホニル尿素、ナトリウム・グルコース共輸送担体2(SGLT2)阻害薬)もまた、脱水状態においては有害な影響を及ぼす可能性があります。
▶予防 3)4) 熱中症のリスクを軽減する方策のアドバイスと対応をします。薄着になり十分な水分補給を心がけることが大切です。エアコンがない場合は、ショッピングモールや食料品店、ホテルなどが避難場所を提案してください。循環器疾患患者さんに対して、塩分や水分の補給のアドバイス、症状はもちろん血圧や心拍数などの全身状態に応じて内服薬の調整や休薬などの予防措置が必要になります。 家族や知人には、状況を頻繁に確認するようにお願いします。
▶連携医療機関の先生方へ 夏バテや熱中症で対応に困ったり、判断に迷うことがあれば、ハートコールなどで当院循環器内科に相談をしていただければと思います。
(参考文献) 1)気象庁各種データ・資料 https://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html 2)Bouchama A, et al. Prognostic factors in heat wave related deaths: a meta-analysis. Arch Intern Med 2007;167:2170-6. 3)Epstein Y, Yanovich R. Heatstroke. N Engl J Med 2019;380:2449-59. 4)Marchand M, Gin K. CJC Open 4 (2022) 158-163N E W S 1 | 整形外科(肩関節)常勤医1名増員 9月より計4名体制 |
2024年9月から整形外科では、新たに札幌医大整形外科学教室より肩関節を専門とする常勤医1名が増員派遣され、診療体制が強化されました。これにより、整形外科医師は計4名体制(常勤3名・非常勤1名)となり、とくに3名の常勤医は、それぞれ下肢(股関節)、脊椎、上肢(肩関節)に高い専門性を有しており、各領域に経験豊富な専門医が揃いました。詳しいご紹介は次号以降に掲載いたします。
N E W S 2 | 医師情報を更新、内容を充実(20ページ増頁) 診療ガイドブック2024を発刊 |
4月以降の診療体制の強化に伴う最新の医師情報や診療情報、実績等を掲載した「診療ガイドブック2024」を発刊しました。前年度版より計20ページ増やし、内容をより充実させました。紹介患者さんに安心して受診いただけるよう、ご紹介時に参考として本ガイドブックを直接お渡し頂くなど、ご活用いただけますと幸いです。関係医療機関の皆様には当ガイドブックを送付させていただきましたが、ご入用の際には改めて送付しますので、必要部数を地域医療連携室までお知らせください。
地域医療連携室直通 TEL:0143-47-4304 FAX:0143-47-4305
連携実績
2023年度 紹介・逆紹介・受託検査件数(直近3年間)
2023年度 紹介・逆紹介・受託検査件数(診療科別)
紹介予約について
紹介患者さんの外来診療予約について
当院では、地域医療連携推進の一層の実効を図るため、 紹介患者さんのFAXによる「受診予約・検査予約」を行っています。
予約方法 |
① 「受診予約申込票(診療情報提供書)」、「検査予約依頼票」のFAX送信をお願いします。 ※当院専用の受診申込票がございますが、紹介元医療機関さまで ご使用になられている様式でも予約できます。 診療情報提供書には氏名、フリガナ、生年月日、性別、住所、電話番号、 受診希望日、保険情報を明記していただきますようお願いいたします。 ※当院専用の受診予約申込票・検査予約依頼票は、当院ホームページの 「診療科・部門・センター」/「地域医療連携室」/「紹介予約について」からダウンロードできます。
② 折り返し「受診予約受付票」、「検査予約受付票」をFAX送信いたします。 ※ご希望の日時で予約をお取出来ない場合や、返答にお時間がかかる場合にはご連絡いたします。
③ 患者さんには「受診予約票(受診者用)」、「検査予約票(受診者用)」をお渡しいただき、 受診日・検査日に当院受付へ提示くださるようお伝えください。
お問い合わせ先 地域医療連携室
専用FAX 0143-47-4305直通TEL 0143-47-4304
夜間・休日の救急対応につきましては下記専用ダイヤルまでお願いします。 救急専用ダイヤル 0143-47-0990「受診予約申込票」「各種検査予約依頼票」がダウンロードできます
受診予約申込票 | PDF:327KB | Excel:80KB |
各種検査予約依頼票 | PDF:198KB | Excel:87KB |
造影CT・MRI検査依頼票 | PDF:185KB | Excel:84KB |
経食道超音波・トレッドミル検査依頼票 | PDF:151KB | Excel:54KB |
消化器内視鏡検査依頼票 | PDF:186KB | Excel : 101KB |
胃内視鏡説明書・同意書 | PDF : 158KB | Word : 18KB |
大腸内視鏡説明書・同意書 | PDF : 144KB | Word : 19KB |
「PET-CT検査依頼票」「PET-CT検査の注意事項等」がダウンロードできます
PET-CT検査依頼票 | PDF:167KB | Excel:83KB |
検査の流れ及び注意事項等 | PDF:733KB |
地域医療連携室のご案内
地域医療連携室では、地域の先生方と当院の連携窓口として、 主に前方連携に関する業務を担当しております。 具体的には、ご紹介いただく患者さんがスムーズに受診できるよう事前調整を行う 「事前外来予約」や、「受託検査予約」、「セカンドオピニオン」に関してのご相談、 ご予約なども行っております。
<業務の内容> 1.外来診療の事前手続き 2.放射線科・内視鏡室・臨床検査科等への検査予約 3.症状の安定した患者さんを地域の先生に紹介(逆紹介) 4.セカンドオピニオンの相談・予約窓口 5.地域医療ネットワーク『スワンネット』申込み窓口 (スワンネット北海道について) |
受付時間 | 平日 9:00~17:00 |
TEL直通 | 0143-47-4304 |
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